〈実務〉
【新着】

アヘンやヘロインなどの麻薬の原料となるケシの産地を抱えるアフガニスタンでは、世界に流通しているアヘンの8割以上が由来すると推計されている。

(タリバン「脱麻薬ビジネス」に疑念 海外支援相次ぎ停止、重要資金源 - 産経ニュース sankei.com/article/202108…  
#薬育 #アフガニスタン #ケシ)

【概要】

アフガニスタン、パキスタン、イランの国境が交錯する「黄金の三日月地帯」呼ばれる地域は、タイ、ミャンマー、ラオスで形成される「黄金の三角地帯」と並ぶ世界最大の麻薬密造地帯である。 

タリバンが過去に麻薬の原料植物となるケシの栽培を禁止して以来、生産量は縮小したものの、政権崩壊後は増産され、世界のシェアは85%を超えている。

ケシはケシ科ケシ属に属する一年草であり、地中海地方や東欧に原種があるとの諸説はあるが、野性下における発見はされていないため、確証はない。

〈研究〉
【分析】

ケシの未熟果を傷つけて得られる乳液からアヘンが穫れ、アヘンを精製したモルヒネや、モルヒネを化合したヘロインは、麻薬に指定されている。

薬用だけでなく、日本を始めとした各国で規制の対象外とされている発芽していないケシの種子(ポピーシード)は、食用の香辛料や工業用の描画油などにも用いられている。

古代には、エジプト、ギリシャ、ローマへと伝わりヨーロッパ全土に薬用として伝わったケシは、中世の大航海時代には、麻薬用のアヘン原料としてアジアなどの世界各地に拡散した。

日本には、室町時代の南蛮貿易によってインドから津軽に伝わり、明治には医療用として品種改良を重ね、昭和にかけて台湾、朝鮮、満洲の市場化により利益を得たが、戦後、GHQにより途絶された。

日本では、あへん法の下で大規模栽培は復活することなく、実験室レベルでの栽培に留まっているが、国際条約によりインド、中国、北朝鮮に並んでアヘンの輸出可能国として認められている。

〈教育〉
【対策】

合法的にケシの最大生産国として輸出を行っているインドに対して、黄金の三日月地帯に位置するアフガニスタンは、非合法の最大生産国とされていて、反政府組織の資金源にもなっている。

黄金の三角地帯を形成するタイ、ミャンマー、ラオスでは、国連や外資系企業の支援により、コーヒーなどの換金作物への転作が進められている先行事例に倣い、隣国政府の協力の下、国際的な解決方法が求められる。

【参考】

『ジャスト6.5 闘いの証』

2019年にイランで製作されたサイード・ルスタイ監督による作品である。

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世界のアヘン生産の8割を占めるアフガニスタンに隣接するイランのアヘン押収量は、世界の9割に昇り、警察と密売組織による正真正銘のアヘン戦争が忠実に描かれている。